美しき天然、今井ゆうぞう

そこはかとない天然ぶりが話題をよんでいる「おかあさんといっしょ」の歌のおにいさん・今井ゆうぞう。面白い顔をしてみせたり、派手なアクションで笑いをとったりするわけではないのだが、トークのビミョーな間合いがじんわりと可笑しい。

先日は、歌のおにいさん・おねえさんが司会を務めるクイズコーナー「どっちどっち」で、歌のおねえさん・はいだしょうこが「サクランボなら10個くらい食べられる」と言ったのに対し、「おにいさんは100個ぐらい食べられるよ……なぁ〜んて、無理ッ!」。そして何のやりとりもなくそのまま「では…」とコーナーを進行させた。

「100個」という極端に多い数字を出してボケた後、自ら「無理」とツッコミを入れる“ひとりボケツッコミ”。さらに間髪入れずに強引に次の話題に進むという、まあバラエティの世界ではよく見かける光景ではあるが、「おかあさんといっしょ」では非常に珍しいパターンである。
たとえば「おにいさんは100個ぐらい食べられるよ……なぁ〜んてね」「まあ、おにいさんったら食いしん坊ね」「えへへへ」とくれば、いかにも「おかあさんといっしょ」的なやりとりで、特に何も感じなかったであろう。

文字だけでは今井のビミョーな間合いが伝わらないと思うが、とにかくヘンなのである。
台本に書いてある通りに台詞を言っていたのだとしたら、今井の演技力、台本の咀嚼力は凄い。もし、今井のアドリブが含まれていたのなら、その天然ぶり(計算されたものだとしても)は評価に値するものであろう。
この「どっちどっち」の他、オープニングのトークを始め、まるで恋人同士の会話を覗き見しているようなドキドキ感あふれる「しりとりドライブ」コーナーや、サイコロを奪い合うコドモどもに「失礼します」などと慇懃な挨拶をする「さいころアップップ」コーナーなど、今井の素晴らしき天然ぶりは番組のあちこちで発揮されている。

ところで、ハッキリとした顔立ちのはいだは気の強そうな印象があるが、いざトークになるとこれが案外ほんわか系。「もしかして天然さんでは…?」と思わせるシーン続出だ。
思えば、先々代は“親爺ノリのボケ”の速水けんたろうと“純真爛漫天然ボケ”の茂森あゆみ。先代は、“全力疾走する熱き天然ボケ”の杉田あきひろと“小春日和のほんわか天然ボケ”のつのだりょうこ。「歌のおにいさんと歌のおねえさんはWボケ」という時代が既に10年以上も続いているのであった。
さらに、隙あらばオイシイところをさらおうと虎視眈々とボケるタイミングを狙っているように見える体操のおにいさん、佐藤弘道も加わり、今や「おかあさんといっしょ」はボケ合戦の様相を呈している。

毎日同じような歌を同じように唄い、同じような台詞ばかり言っているように見えるかもしれない「おかあさんといっしょ」だが、じっくり見れば笑いどころやツッコミどころ満載。
今後も、そこはかとない天然さん、今井の言動から目を離せない。【み】

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