メジャー級・はいだしょうこ

唐突に「おかあさんといっしょ」の歌のおにいさん・おねえさんをプロ野球の世界にたとえてみる。

野球の名門といわれる大学を出たばかりの新人投手を起用する歌のおねえさん。
音大の声楽科に在籍中に歌のおねえさんに就任した16代目の神崎ゆう子や17代目の茂森あゆみがこのパターンだ。
器楽科出身の18代目のつのだりょうこは野手出身の新人が入団してから投手に転向した感じか。

対して、既に社会人野球で活躍している選手を起用している歌のおにいさん。
たとえば、エレクトーンの世界で実績のあったという6代目の林アキラ、シンガーソングライターの7代目の坂田おさむ、歌謡曲やアニメ・特撮ものの主題歌を唄っていた8代目の速水けんたろう、「レ・ミゼラブル」などの舞台に立った経験のあるミュージカル俳優の9代目の杉田あきひろ。この4月から登場した10代目の今井ゆうぞうも、劇団四季に在籍していたことのあるミュージカル俳優だ。
いわば即戦力である。

さて、今井ゆうぞうと一緒に登場した19代目歌のおねえさん・はいだしょうこである。
はいだは、小6の時に童謡の全国コンクールでグランプリを受賞し、それをきっかけに高校2年まで作曲家の中田喜直氏の指導を受けていたという。中田氏の公演やCDで童謡を歌う経験もあったそうだ。
中田喜直氏といえば、「おかあさん」「めだかのがっこう」「かわいいかくれんぼ」「小さい秋みつけた」など、数々の有名な童謡を作曲しており、その中田氏の師事を受けていたということは、筋金入りの童謡歌手ではないか。
また、昨年まで「千琴ひめか」の芸名で娘役として宝塚に在籍しており、美声に客席が静まりかえったという逸話もあるらしい。
道理で歌が巧いはずだ。
いや、歌が巧いだけではない。表情豊かに子どもに語りかける様子も今井とのトークも安定感抜群。
“大学出身の新人投手”の茂森やつのだ、“社会人野球で活躍していた”歴代の歌のおにいさんに倣ってプロ野球の世界にたとえるならば、はいだはメジャーリーグから移籍してきた大物選手級の貫禄だ。

今日放送された「めだかのがっこう」(中田喜直作曲)の歌唱の素晴らしいこと。
耳なじみの良い伸びやかで透き通るような声、正確なリズム感。
16代目の神崎も歌の巧いおねえさんだったが、神崎の場合、本来の実力に加え、長年歌のおねえさんを務めているうちに歌唱力を磨きあげたように思う。
だが、はいだの歌は、おねえさんに就任したばかりだというのに、既に芸能界でキャリアを積んできた分、声の表現がが豊かだ。完成されている。

おそらく、今後もパーフェクトな童謡やわらべうたを聴かせてくれることだろうが、「イカイカイルカ」や「かっぱなにさま?かっぱさま!」「だんご3兄弟」のような「おかあさんといっしょ」ならではのインパクトのあるコミカルな曲をどう歌いこなすか、どんな声で表現してくれるのかも楽しみである。歴代のおねえさんが着こなしてきたカエルやカッパやタヌキやアリの着ぐるみをまとって激しく踊る姿を早く見たいものだ。【み】

参考:北海道新聞夕刊(2003/4/9)「元タカラジェンヌ 新たな挑戦*はいだしょうこ*19代“歌のお姉さん”*平和、歌で伝える」

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