佐藤弘道、顔の調子のいい日・悪い日

「おかあさんといっしょ」の体操のおにいさん、佐藤弘道は、番組の視聴対象者である乳幼児ばかりでなく、その母親たちにも絶大なる人気を誇っている。
少々甘ったれた風な柔らかな喋り方、いつもニコニコと笑顔を絶やさず、子どもたちに接する優しげな態度。しかも、体操で鍛えた逞しい肉体の上には、一重瞼のキュートな童顔が乗っている。まさに理想のおにいさん。これで人気が出ない方がおかしい。

佐藤の顔は、よく少年隊の東山紀之に似ているといわれている。
かつて「しょうゆ顔」という呼称で一世を風靡した、切れ長の瞳のスッキリとした和風の顔だち。とはいえ、佐藤はヒガシほど気どりかえった二枚目面ではなく、愛敬たっぷり庶民的なハンサムボーイ。ヒガシをキザな平安貴族とするなら、佐藤はそれに仕える愛想のいい従者といった趣である。
少女漫画なんかでよくあるでしょ、こういう設定。貴族と従者は同じ乳母に育てられ、一緒に成長するんだ。そして、この二人に愛を告白され、心ゆれる主役の娘。正統派二枚目の貴族、ヤンチャな従者。どちらも捨てがたい。迷う娘…。だが、たいてい心優しい従者が身をひき、娘はめでたく貴族と結ばれる。主役は貴族だが、読者の人気は従者の方が高かったりするんだよね。

宮川一朗太に似ているという説もある。
映画やドラマなどでふにゃふにゃとした優柔不断な役柄を得意とする俳優だ。映画「家族ゲーム」が代表作であろう。宮川もヒガシと同様の和風な顔だちだが、ヒガシほどシャープなイメージはない。

あろうことか「岡本信人に似ている」という者もいる。
ホームドラマの脇役として長年活躍する「優柔不断の総本山」みたいな俳優である。いくらなんでもそりゃあんまりだ。ママさんたちのアイドル、爽やかな体操のおにいさんが信人に似てるなんて。しかし、ちっこい目やキレイに揃った前歯を見せて笑うしゃくれ気味の口元のあたり、確かに似てないとも言いきれぬ。

ヒガシと宮川一朗太。二人の距離はあまりにも遠い。ましてやヒガシと信人の間には地球と月ほどの距離があろう。だが、「おかあさんといっしょ」を毎日見ていれば、その距離の謎を解く鍵が見つかる。

佐藤、日によって顔が違うのである。
顔の調子のいい日と悪い日がある。

具体的にいうと、顔がスッキリしている日とかすかに腫れぼったい日があるのだ。
特に瞼と頬のあたり。顔がむくんで見える日には、さしもの爽やかな童顔も少々精彩を欠く。

一目見てわかるようなハッキリとした変化ではない。
それは毎日佐藤の笑顔を楽しみにブラウン管をじっと見つめている者にだけわかる程度の、微かな違いである。

佐藤の笑顔は、慣れぬ育児に追われる若いママさんたちの心のオアシス。逞しい肉体がしなやかに跳躍し、人なつこい童顔がにっこりと微笑む。毎朝これを見て、一日の活力を蓄えるという人も少なくないらしい。ママさんたちの熱い視線は、佐藤の顔の変化を見逃しはしないだろう。
言うまでもなく、顔の調子のいい日はヒガシに、調子の悪い日は宮川一朗太に(又は信人に)似て見えるわけだ。

雑誌に掲載されたインタビューによると、佐藤は下戸だそうなので、前日飲み過ぎたというわけでもあるまいが、あるいは、寝る前に大量の水分を摂取したとか、疲れがたまって収録の日に朝寝坊した、といった理由かもしれぬ。これはあくまでも私の推測であり、本当の事情は定かではないが、ヒガシの日と宮川一朗太の日(又は信人の日)があることのみが確かな事実である。
無論、佐藤の顔がスッキリとしているに越したことはないのだが、「おかあさん」ウォッチャーなら、今朝の佐藤の顔の調子で一日の運勢を占うという楽しみ方も、これはこれでまたオツなものではないだろうか。【み】

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