1998年9月「速水けんたろうコンサート」レポート

9月15日、敬老の日。我々東京福袋(みやした・吉野)は例によって日頃懇意にしている3歳児と共に、速水けんたろうおにいさんのコンサートに行ってきた。場所は3月と同じく、江東区東陽の東京イースト21イーストプラザである。この日は、大型で並みの大きさの台風5号が関東地方に接近、雲行きが怪しい。

小雨しのつく中、先乗りのみやしたが、10時ちょっと過ぎに会場に到着した時には、すでに用意されていた椅子席はほぼ満席。3月のコンサートの時は、10時半に到着して、まだ席に余裕があったというのに。
満席のベンチを呆然と見つめるみやした。いやいや、呆然としている場合ではない。先乗り部隊としては、なんとしてでも席を確保せねば。3人家族がキープしている4人掛けベンチの端っこを、ひたすら頭を下げて一人分あけてもらい、前後並びの2席をなんとか確保。下手の一番端とはいえ、最前列である。

前回は一番後ろの席だったので、今回はもう少し前列に座ろうと早めに家を出てよかった。イースト21の事前の宣伝がうまくいったのか、はたまた速水の人気が急激に上昇したのか。いずれにせよ、大盛況、誠に喜ばしい。

こうしている間も、雨は降ったりやんだり。スタッフがPAにビニール袋をかけたり、円陣を組んでなにやら相談を始めたり、待っているこちらもなんとなく落ち着かない。結局、11:30から始まる予定だった午前の部は、天候をかんがみて5分早くスタートすることになる。

懇意の3歳児と吉野(38歳児)が会場にたどり着き、確保してあった席についた時には、ステージはすでに始まろうとしているところであった。
前回の開演前には「うっかりアナウンスお姉さん」が活躍したが、今回も前説の女性が登場し、注意事項や雨が降っても続ける旨を告げる。ストレートのロングヘアにベレー帽をかぶり、赤のタータンチェックのミニのオーバーオール姿のこの女性、いかにも子ども向けイベントのお姉さんというスタイルではあるが、お顔を拝見すると、ちょっと、ねえ。メイクのせいだかなんだか、妙に老けて見えるのである。こういうスタイルが小さい子どもにウケがいいのはわかるが、似合う似合わないという観点から衣装を選んでもいいのではないだろうか。

さて、おなじみ「リズム君・メロディちゃん」の前奏にのって、舞台上手からおまちかねの速水が登場。この日の速水のいでたちは、白のTシャツ、紺色のスラックスに、イタリアの太陽を思わせる鮮やかなオレンジ色のジャケット。速水らしい爽やかな服装だ。

2曲目は「はいっ」の合の手が楽しい「公園にいきましょう」。そして、「犬のおまわりさん」「パンダ・うさぎ・コアラ」「こぶたぬきつねこ」「ぞうさん」と動物ソングが続く。

「こぶたぬきつねこ」を唄った後、「そういえば、タヌキの『ポンポコポン』って、鳴き声かなあ」と、さすが長年この歌を唄い続けている者ならではの鋭い指摘。おそらく速水は世界一この歌を歌っている者の一人だろう。「これ、鳴き声じゃないんだけど、きっと作った人がタヌキならこれが一番いいと思ってそうしたんだよね。ごめんね、気にしないでね」だって。このトーク、3月のステージではなかったので、この半年の間に作られた新ネタであろう。

ここで、のそのそとパンダとイヌのぬいぐるみが登場。普段、速水が共演しているどーなっつ4匹衆とは比べるべくもない、無表情でチープなぬいぐるみである。

「ご紹介します、パンダの……、ええと、名前はどうしようかな、みんなにつけて貰おう……、え、パンパン? じゃ、パンパンにしようか」

えーっ、パンパンはまずいだろ。いいのかよう。みやしたの困惑をよそに、パンダはパンパン、イヌはシェイクと命名され、コンサートは手あそび歌のコーナーに突入。「げんこつやまのたぬきさん」「おみせやさんにあるものなんでしょう」「おべんとうばこのうた」と続く。
「おべんとうばこ」では、「お兄さんの隣の家に住んでいるゾウサンがお腹をすかしているんだ、あ、ゾウサンって呼ばれているただのおじさんなんだけどね」という、3月のコンサートでも使用した前ふり。

ステージ後方に置いてあったマイクスタンドを持ってきて、「これ、みんな、なんていうか知ってる?」と速水。またどうしてマイクスタンドなんか子どもたちに質問するかね、と不思議に思いながら見ていると、「これ、マイクだよね、ここにマイクをつけると、両手を使えるようになるんだよね」などと、妙にマイクスタンドで引っ張る。と、マイクをスタンドに装着したところで、マイクスタンドがずり下がる。場内大爆笑。なるほど、そういうことだったか。ヘンに引き伸ばしたトークの間、スタンドのネジをゆるめていたのだな。
何度も同じ動作を繰り返し、そのたび、子どもたちは大喜び。さらにマイクに額をぶつけてみるなど、マイクスタンドを使ったネタでひとしきり盛り上がる。先ほどの「ポンポコポン」ネタに続き、またしても新しく編みだされたネタを見ることができたわけである。

再び、歌のコーナーに戻り、「おーい!」「どんな色がすき」「虹のむこうに」という、「おかあさん」ヒットソングメドレー。
「どんな色がすき」では、ステージを降り、中央通路を歩きながら唄う。速水に群がる幼児と母親たちは、救いを求めてラビに群がる信者さながらであった。懇意の3歳児を抱き上げ、ベンチをまたがせて通路側に押しやる。さすがは「おかあさん」関係のコンサートに何度も行っている3歳児、すかさず速水と握手。さらに、どさくさにまぎれ、集まっている子どもたちの頭越しにみやしたも握手してもらう。ラッキー。

そして、子どもたちが大好きな「アイアイ」でコンサートはおしまい。割と素っ気ない挨拶をして、あっというまにステージから去る速水。ステージの裏には親子連れが何組も待機しており、速水に握手を求めたり写真を撮ったりしている。ちょっとうらやましい。

と、ここで、お姉さんからアナウンス。このあと、速水のテレホンカードとブロマイド(!)の販売会をステージ上で行うという。テレホンカードは1000円、ブロマイドは4枚1組で500円。テレカはともかく、ブロマイド(といっても普通の紙焼き写真)4枚で500円というのは、暴利とまではいわないが、なかなかの値段である。しかし、これを購入すれば、速水に間近で会えるのである。買わないわけにはいかないではないか。

早速、みやしたが上手側に作られた列に加わる。並んでいると、お姉さんが、「お釣りは用意していませんので、ピッタリでお願いします」などと言っている。時間の節約ということなのだろうが、500円と1000円なんだからさ、お釣りくらい用意しとけよな。案の定、みやしたの財布には細かい金が入っていない。テレカはすでに持っていたので、ブロマイドを2組購入することにする。

1000円札を握りしめ、順番を待つ。ステージに上がる直前に、懇意の3歳児を呼び寄せ、2人で速水の前に。
1000円を払って白封筒に入れられたブロマイドを2組ゲットすると、まず3歳児が握手。続いて、みやしたの番だ。台風の影響で、風が強く、髪は乱れ放題。こんなぼさぼさ頭で速水に会うことになろうとは、ああ、台風のばか。それでも、コンサート開始を待つ間に、普段は滅多にしない化粧をしておいたみやしたである。年に3回するかしないかという、せっかくの化粧顔も、風と湿気でぐしゃぐしゃに違いない。悔しい。台風のばか。

みやしたが、おずおずと速水に手を差し出すと、きちんと目を見つめて「どうもありがとう」と言ってくれるではないか。さすがは長年芸能界で活躍しているだけのことはある。

感激。興奮。
生きててよかった。

と、このようにおおいに浮かれていたみやしたであったが、好事魔多し。
「みやしたさん、ですか?」突然、見知らぬ人から声をかけられた。我がサイトの掲示板の常連、Tさんとそのお嬢さんであった。

Tさんとは掲示板でのおつきあいだけで、今までお会いしたことはない。
「ど、どうして、私がわかったんですか?」狼狽するみやした。
「いやあ、子どもよりも早く反応してて、けんたろうおにいさんに握手を求めているのを見たので、きっとそうだろうと思って…」

ああっ、見られていたのか! 穴があったら入りたいよ。興奮のあまり立ち上がって踊ってたり、泣きながら嬌声を発してたりしなくてよかった。人間、どこで誰に見られているかわからないものである。
また、春の「おかあさんといっしょファミリーコンサート」で大変お世話になった掲示板の常連さんの奥様とその坊っちゃんに再会できたのも嬉しい出来事であった。

さて、コンサートは、立ち見客、ベンチの間に座る客など、とにかくギッシリ満員、大盛況。午後の部に心を残すみやしたと3歳児ではあったが、3歳児の引率とビデオ撮影に疲弊した吉野が帰りたいと強く主張したため、残念ながらこれにて帰宅。

それにしても、事前に音合せ、リハーサルもせず、いきなり本番に挑んだ速水、このコンサートは各地でさぞや何度も繰り返しているのであろう、誠に安定したステージであった(とはいえ、オープニングの「リズム君・メロディーちゃん」の第一声、少しばかり声が裏返っていたが!)。

ところで、みやしたが当日撮影したビデオを見ていたところ、オープニングで「こんにちはー!」と叫ぶシーンを、相方の吉野は「えっ? 『おくさまー!』?!」と聞き間違えやがった。いくらなんでもステージに飛び出してくる時に「奥様〜」なんて叫ぶ歌手はいないよ。聞き間違いにもほどがある。
コンサートとは全く関係ない話だが、あまりに滑稽な聞き間違いだったので、皆様にもご報告した次第。くだらなくって面目ない。吉野、耳をよく掃除しとけよ。【み】

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