無理を承知で今井ゆうぞうの今後を大胆予想

来年の事を話すと鬼が笑うそうだが、食われるならともかく笑われるくらい別にかまわないのではなかろうか。中野あたりの居酒屋で「俺たちは笑われるんじゃなくて笑わせたいんだ」とか熱く語り合う若手芸人じゃあるまいし、しかも相手はヒトじゃなくて鬼なんだし、少しくらい笑われてもいいような気がする。

さて、暦の上での正月は1月だが、ETVの正月ともいえる新年度は4月である。
来年の事を話すと鬼に笑われるのなら、もし来年度の話をしたら何が笑うのか。天狗か。河童か。狸か。まあ、化かされたり尻子玉抜かれたりするわけじゃないから誰が笑ってもいいんだけど、それはともかく、そろそろ新年度について思いをはせる時期である。

昨年、パイロット版がオンエアされた「シャキーン!」がレギュラー化されるとか、アニメのオリジナルストーリーを生かして、テレビ、ラジオ、テキスト、WEBそれぞれのメディアで展開していく新しい形の語学番組「リトル・チャロ カラダにしみこむ英会話」とか、若い世代に向けた初歩の経済学の講座番組「出社が楽しい経済学」とか、女優の松坂慶子が「3か月トピック英会話『赤毛のアン』への旅」で実の娘と共演するとか、4月からの編成情報がちょろちょろと公開されつつある。

こんな風に情報を小出しにしないで、NHKオンラインに専用のページをこしらえてドーンと一気に紹介してくれればいいのに。もうっ。NHKにはNHKなりの思惑があり、制作現場には制作現場なりの事情というものがあって現在のような形での発表となっているのだろうが、ああ、イライラする。まとめてくれ。

さて、来年度、5年ぶりに「おかあさんといっしょ」の歌のおにいさん&おねえさんが交代する。
1996年に「きょういくてれびのたまてばこ」という私設ファンサイトを開設して以来、子ども向け番組を中心にETVを楽しんでいる我々東京福袋としては、これは重大ニュースだ。

新しい歌のおにいさんは国立音楽大声楽科を卒業し劇団四季に所属している横山だいすけおにいさん、歌のおねえさんはやはり声楽を専攻している現役の音大生の三谷たくみおねえさん。

現在の歌のおにいさん・今井ゆうぞうも劇団四季出身である。2期連続四季。早口言葉みたいだ。3回続けて言ってみよう。2期連続四季2期連続四季2期連続四季。言えましたか?
さらに言うなら、その前の歌のおにいさん・杉田あきひろもミュージカル畑出身。3期連続ミュージカル出身。ついでだからこれも3回続けて言ってみよう。3期連続ミュージカル出身3期連続ミュージカル出身3期連続ミュージカル出身。ああ、無駄に文字を費やしてしまった。面目ない。

なお、音大卒の歌のおにいさんというのは非常に珍しく、おそらく5代目歌のおにいさん・林アキラ(東京芸術大学音楽学部声学科卒)以来2人目。ちなみに横山が卒業した国立音大は国立といっても実は私立だ。コクリツではなくクニタチと読む。15代目歌のおねえさんの森みゆきも国立音大卒。で、林の母校の東京芸大がコクリツの方の国立大学なのだった。豆知識。

 学歴主な前歴
初代
田中星児
法政大卒NHKの音楽番組「ステージ101」でデビュー
2代目
水木一郎
ポップス歌手としてデビュー、その後アニメ・特撮歌手として活躍
3代目
たいらいさお
ポップス系の歌謡曲歌手としてデビュー
4代目
宮内良
5代目
かしわ哲
桐朋学園演劇科卒
5代目
林アキラ
東京芸術大音楽学部声学科卒9歳から始めたエレクトーンで数々の賞を受賞
6代目
坂田おさむ
明治大政治経済学部卒フォーク系のシンガーソングライター
7代目
速水けんたろう
大阪電気通信大工学部卒ポップス系の歌謡曲歌手
8代目
杉田あきひろ
慶應義塾大文学部哲学科 美学・美術史学専攻卒ミュージカル俳優
9代目
今井ゆうぞう
独協大外国語学部英語学科卒ミュージカル俳優
10代目
横山だいすけ
国立音楽大声楽科卒劇団四季所属

ふと思いついて、歴代の歌のおにいさんの前歴を一覧にしてみたのだが、並べてみると学歴も経歴もバラバラ。せいぜい「音楽に関係した前歴のある人が選ばれている」程度の結論しか導き出せない。まあ、自分から歌のおにいさんのオーディションを受けたり、関係者から推薦されたりするような人達なわけだから、音楽系の人材ばかり集まるのも当たり前か。
それにしてもフォークシンガーがいてエレクトーンの名手がいて工学部出身者がいて美学専攻……って、幅広いにも程がある。今後はぜひ「元板前」とか「元プロ野球選手」とか「元編集者」とか「元銀行員」とか、より一層幅広い人材を集めてもらいたいものだ。で、ファミリーコンサートに歴代のおにいさんが一堂に会するとキッザニア状態。

さて、2004年度で「おかあさんといっしょ」の体操のおにいさんを卒業した佐藤弘道は、歌、CM、バラエティ番組、コンサート、イベントなどなど、幅広く活躍中だ。特に民放局での活躍ぶりはめざましく、CM出演も多いこともあって、毎日…は極端にせよ、週に1度くらいは必ずどこかの局で顔を見るような状況が続いている

体操のおにいさん時代から若いママさん達を中心にカリスマ的な人気を集めていた佐藤だ。
しかも、NHKで長くおにいさんを務めていたクリーンなイメージがあり、本業の体操はもちろん歌やダンスもこなせること、気軽に家族と一緒にテレビ出演するのも起用する側としては評価が高かろう。

今回、番組を卒業する今井ゆうぞうも佐藤同様に乳幼児のいる家庭を中心に視聴者から圧倒的な支持を受けており、これからどんなファミリー向けイベントに出演しても必ず満員御礼になるだろうし、家族で楽しめるミュージカル、育児用品や食品などのCM、童謡のCD等、4月からは引く手あまたに違いない。もともとミュージカル俳優だったわけだし、所属事務所もミュージカルに強い東宝芸能。「おかあさんといっしょ」卒業後はおそらく舞台を中心に活躍していくものと推測される。

だが、あえて、私は違う予想をしてみたい。
今井が真の魅力を発揮する場所は「元歌のおにいさんの仕事」や「ミュージカル俳優」以外のところにあると思うのだ。

これまで、見ようによっては疲れてるような困惑してるような表情を浮かべたり、歌のおねえさんのボケに対してやけにシニカルな調子でツッコミを入れたりと、歌のおにいさんにあるまじき言動で視聴者を楽しませてくれてきた今井。ジョークを言う時の絶妙な間(マ)も忘れがたい。
語弊を恐れずにお笑い芸人にたとえると、これまで我々が抱いていた「明るく元気なNHKのおにいさん」のイメージが明石家さんまとするならば、今井の場合、板尾創路とかよゐこの有野晋哉とか土田晃之といった系統の引き気味の調子で場の笑いをさらっていく芸人を連想させる。案の定かえって話がわかりにくくなっちゃったけど。ま、ここはどうかひとつおおらかな気持ちでさらりと読み進めていただきたい。

若い奥様層からの熱烈なる支持、テレビ映えするスッキリとしたルックス、そしてこの芸風。
そんな今井の新たなる活躍の場は、ズバリ、東京MXテレビ「5時に夢中!」のMCだ。

現在、この1月から4代目MCの柴田光太郎がアクの強いレギュラー陣を相手に孤軍奮闘している。
私はマツコ・デラックスがレギュラー出演している水曜を主に見ているのだけれど、MCが柴田に交代して以来、マツコ嬢のご機嫌が今ひとつよろしくない気がする。それをいかにもマジメそうな柴田が必死にフォローしていこうと頑張っている様子が痛々しい。まあ、相性とか慣れとかいろいろあるんだろうけど、がんばれ柴田、負けるな柴田。

さあ、ここに柴田に代わって今井ゆうぞうをMCとして投入してみよう。
だが、今井は決して頑張ってはいけない。「おかあさんといっしょ」の時と同じように、時にニコニコと時にシニカルに時に疲れたような顔で、力まず淡々と番組を進行させてこそ今井の魅力が生きてくる。

カチっとしたスーツを着てメガネをかけた今井ゆうぞうがマツコ・デラックス相手に肩の力を抜いたまんま丁々発止とやりとりするシーンが見たい。
そして、今井と同時に「おかあさんといっしょ」を卒業するはいだしょうこを水曜日のレギュラーに起用していただきたい。はいだならば、現在の水曜レギュラーの若林史江に勝るとも劣らない天然っぷりを見せてくれるはずだ。しょうこおねえさんの素晴らしき天然の素養が思う存分発揮されるえかきうたのコーナーがあればなおよろしい。【み】

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