佐藤弘道の今後を考える

4月に「おかあさんといっしょ」の体操のおにいさんを卒業した佐藤弘道。
フジテレビ「海筋肉王」の司会や主婦向けのワイドショーへのゲスト出演、舞台「筋肉ミュージカル」、以前「おかあさんといっしょ」で共演していた8代目歌のおにいさん・速水けんたろうとのコンサートツアーなど、あちこちで大活躍だ。3冊目の著書にして初のエッセイ集「子どもはぜんぜん、悪くない。」(講談社)の売れ行きも良いらしい。

もう10年近く前になるが、当サイトの掲示板で、「運動神経抜群の佐藤に『筋肉番付』や『東京フレンドパーク』に出演してほしい」という話題で盛り上がったことがあった。
「筋肉番付」は、放映局は違えども後継番組にあたる「海筋肉王」への出演で実現化したが、「東京フレンドパーク」はまだ。フジテレビ系の「筋肉ミュージカル」と「海筋肉王」に出演中の身ながらも、TBSの「はなまるマーケット」にこの2ヶ月で2度もゲストに招かれているところを見ると、こちらも夢ではないかもしれぬ。
コンビを組むとしたら、現在コンサートツアーで共演中の速水とか、「海筋肉王」と「筋肉ミュージカル」で共演中のボビー・オロゴンや池谷兄弟、高校時代の同級生だというプロゴルファーの西川哲といったところだろうか。

ところで、体操のおにいさん時代からコミカルな演技を得意としていた佐藤、バラエティ番組のノリは彼の守備範囲かもしれないのだが、実際に本職のバラエティタレントたちと絡むと、意外と持ち味が出ていないように感じる。
今のところ「ママたちに大人気の! あの! 『おかあさんといっしょ』の! 体操のお兄さん!」というビックリマークつきのいわばお客様扱いゆえ、持ち前の剽軽さを発揮する隙がないのだろう。
コミカルな演技を巧みにこなす佐藤ではあるが、非常に真面目な人柄もまた彼の持ち味である。いや、むしろ、こちらが本領かもしれない。
だから、下世話な話題あふれる主婦向けのワイドショーや「東京フレンドパーク」のようなバラエティ番組よりも、もっと彼の良さを表現できる番組が他にあるような気がするのだ。

たとえば、「課外授業 ようこそ先輩」(NHK)。
これは、各界の著名人が母校の小学校を訪れ、自らの専門分野を後輩たちに授業するという好番組である。
佐藤の専門分野である体操を教えつつ、その合間に小学生たちが幼い頃に夢中になっていたであろう「あ・い・うー」(「おかあさんといっしょ」の先代の体操)をみんなでやってみる…なんていう構成はどうだ。
この番組に登場するのは高学年の子どもたち。ちょうど羞恥心が強まる年頃、「この年になって赤ちゃんの体操なんて…」などと腰が引けるかもしれないが、なに、みんなで体操すれば恥ずかしくなんかないぞ。しかも、弘道おにいさんの指導つきだぞ。

あるいは、「NANDA!?」(テレビ朝日)。
こちらは、ウッチャンナンチャンの南原清隆がMCを務めるスポーツバラエティ。お笑いが本職の南原よりも、ゲストとして出演するアスリートたちのトークの方が面白いという不思議な番組だ。バラエティ仕立てながらも、良く言えば真摯、悪く言えば地味。南原やスタッフのスポーツに対する愛情や畏敬の念が、見ている者にありありと伝わってくるのが楽しい。
幼児や小学生に体操を教えている佐藤は、「逆上がりができるようになりたい」「跳び箱が苦手」「でんぐりがえしができない」といった悩みを持つ子とその親や教師へのアドバイス役にうってつけではなかろうか。
題して「体育ってNANDA!?」。

体操のおにいさん時代は、番組やコンサートでボケて笑いをとっていくという役回りを与えられることが多かった佐藤だが、バラエティ番組で活躍するお笑いタレントたちの中でそのスタンスを維持するのは難しかろう。
むしろ、ツッコミ上手なタレントに話題を転がしていってもらい、番組の流れに身を任せた方が得策だと思う。
それには、やはりスポーツバラエティで、当代一のツッコミ・ダウンタウンの浜田雅功をMCに擁する「ジャンクSPORTS」(フジテレビ)が良さそうだ。
この番組での浜田は少々悪ノリが過ぎる面もあるのだが、一般に知名度の高くないスポーツの選手や解説者たちから笑えるトークを引き出す力量はたいしたものである。

とはいえ、佐藤はスポーツ選手ではないし、スポーツ解説者でもキャスターでもない。何の枠で出演したらよいのか。
そうだ、いっそ「体操のお兄さん」というテーマはどうだろう。
「おかあさんといっしょ」の歴代の体操のおにいさんから数名(初代体操のおにいさん・砂川啓介や、「ピンポンパン」にも出ていた6代目の輪島直幸あたりが適役か)。
フジテレビの「ママとあそぼう!ピンポンパン」の体操のお兄さん(たとえば「おかあさんといっしょ」の体操のおにいさんだった初代の佐久間俊直はどうだろう。2代目の金森勢だったら万々歳だ!)、テレビ東京「おはスタ!」の田中光、「英語であそぼ」や「からだであそぼ」のケイン・コスギ。
そうそう、NHK教育「ピタゴラスイッチ」で「アルゴリズムたいそう」を担当する“いつもここから”なんてのもシブいかも。
これに加えて、「ひらけ!ポンキッキ」から現在放送中の「ポンキッキーズ」に至るまで、表情ひとつ変えずにありとあらゆるスポーツを巧みにこなし続けている幼児番組界随一のスポーツマン・ガチャピンをブッキングすれば文句なしだ。

番組出演中のアクシデント、“体操のお兄さん”ならではの悩み、共演するお姉さんとのエピソードなどなど、聞いてみたい話は山ほどある。
かつて「ダウンタウンのごっつええ感じ」(フジテレビ)のコントで「おしゃれなやさい」だの「ブレーメンのおんがくたい」だのを口ずさんでいた浜田なら(我が子と一緒に「おかあさんといっしょ」を見ていた?)、幼児番組のお兄さんたちのトークをうまく捌いてくれるのではなかろうか。
今後、CM、コント、レポーター、時代劇、歌などなど、さまざまなジャンルからのオファーがあることだろう。
だが、やはり彼の持ち味が存分に生きるシーンが見たい。
真面目で優しく茶目っ気があり、日本中の子どもたちを愛し、そして笑うとクッキリとエクボがへこみ真っ白い歯が光る…という佐藤弘道ならではの魅力が炸裂する番組で活躍してほしいのだ。【み】

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