このブログでは、主に昭和期に製作された英映画社 (1927-2009) の作品およびチラシの画像を紹介しています。古い資料が多く文字がつぶれて読みにくい箇所があるため、文字起こししたテキストを添えています。
なお、当時と現在では考え方やさまざまな環境が違うこともあり、今見ると非常識に思える部分がありますが、歴史的な資料として、誤字や旧仮名遣い等も含めできるだけそのままの形で掲載しておりますことをあらかじめご了解ください。また、掲載されている住所や連絡先は当時のものですのでご注意ください。
データ
「京都の川」
1971(昭和46)年
企画:近畿日本ツーリスト
製作担当:株式会社 英映画社
カラー34分
文部省特選
第26回芸術祭大賞(日本記録映画の部)
第9回日本産業映画コンクール最高賞
昭和46年度教育映画祭最高賞
第27回東京都教育映画コンクール最優秀賞
キネマ旬報文化映画ベストテン第一位
昭和46年度観光映画コンクール最優秀賞
監修 | 樋口清之 |
製作 | 高橋銀三郎 |
脚本 | 青山通春 |
撮影 | 宮下英一 |
音楽 | 真鍋理一郎 |
製作スタッフ | 長井貢 千葉寛 江原正雄 赤坂修一 竹内三郎 瀧川正年 |
動画
NPO法人科学映像館様が配信しているYouTube動画へのリンクです
チラシ
チラシのテキスト(文字起こし)
古都に展開する遺跡や文化財から、
人間の歴史を探ぐる記録映画
京都再発見の楽しさ
歴史的な遺跡や文化財は、たゞ見てまわるだけでも結構楽しい。しかしそれでは折角宝の山に入りながら、手ぶらで帰って来るようなもので、甚だもったいないと言わざるを得ない。遺跡や文化財というものは、その生い立ちや歴史に、案外知られていない面を持っているものだが、もしそれを知る事ができれば、興味はさらに何倍も深くなり、新しい発見をする喜びも生れて来る。
この作品は、そうした知られない面の発掘にポイントを置き、数多い遺跡を鴨川、桂川、宇治川、木津川などの流れに沿って整理しながら、千数百年にわたって京都地方に展開した人間の歴史を探ってみようとした。すでに沢山のガイドブックや映画などによって言いつくされた観のある、京都のいわゆる名所旧跡から、新しいものを発見するのは決して易しい事ではない。しかし国学院大学教授、樋口清之氏の行き届いた監修によって、独創的な解釈もあちこちに見られ、京都再発見の楽しい、また絶好の手引きとなっている。
内容
いつの世でも川は人を育て、歴史をはぐくんできたが、勿論京都もその例外ではない、千数百年にわたってこの地に展開した、人の世の興亡の歴史も、此処をうるおす鴨川、桂川、宇治川、木津川などの河川によってはぐくまれたものであった。話はその河川のひとつひとつに沿って展開する。
(鴨川に沿って) | 大原の里 | 都から遠く離れたこの地は、古くから弥陀の浄土の地と考えられていた。此処に三千院や寂光院が、雪に埋もれながらひっそりと建っている。 |
若狭の道 | 京都と裏日本を結ぶ、物資輸送の動脈。 | |
下鴨神社 | 水の神様、都の浄化を司どった。 | |
京都市街 | 頼山陽の山紫水明処、歌舞伎発祥の地である河原、関白秀次公の墓のある瑞泉寺、方広寺大仏殿建立のための運河であった高瀬川。 | |
神護寺 | 真言宗発祥の地 空海と最澄 | |
嵐山 | 桂川の上流、保津川、丹波と山城の動脈、角倉了以。 | |
嵯峨 | 大覚寺、天竜寺、野々宮、桂離宮、西芳寺 | |
太秦 | 大陸からの帰化人、豪族秦氏と弥勒菩薩のある広隆寺 | |
(宇治川に沿って) | 琵琶湖 | 宇治川の水源 |
宇治の街 | 日本三古碑のひとつ宇治橋の断碑 | |
平等院 | 藤原貴族と庶民のくらし | |
興聖寺 | 道元禅師がこの寺で禅をはじめて宗派とした。 | |
伏見 | 酒造り、豊臣家の興亡、参勤交代の西国大名の上陸地 | |
(木津川に沿って) | 笠置山 | 弥勒信仰と南北朝争乱の後醍醐天皇の行在所 |
銭司 | 1,300年の昔、貨幣和同開珎が鋳造されたところ | |
加茂 | 天平時代聖武天皇が遷都した恭仁京跡 | |
浄瑠璃寺 | 庶民の手によって維持されてきた寺と野の仏 | |
田辺 | 一休禅師がその生涯の後半をおくった一休寺 |
京都を育て、千年の歴史をはぐくんだ川。これらの川は今後どんな歴史をその水に映す事だろうか。今日も川は流れて止むことがない。