古い映画やドラマなどの映像から昭和の渋谷の風景を探しています。

映画「狂熱の季節」
外国人の客を連れたユキ(千代侑子)と車に乗った明(川地民夫)と勝(郷鍈治)がハチ公広場で落ち合うシーン。
1960(昭和35)年/日活
出演:川地民夫、郷鍈治、松本典子、千代侑子、長門裕之
鑑別所帰りの明が富裕層の文子と出会ったことで、彼女の人生に再生不能な傷跡を残していく。刹那的に生きる明と難しい理屈で自らを追い詰めていく文子の対比。
富裕層の描き方がカリカチュアライズされすぎで、明の過剰に奔放な演技と併せて滑稽に見えてしまう点はあるが勢いのある映画だ。戦災復興とオリンピックで建設まっさかりの渋谷、いたるところが工事中だ。
映画「爆弾男といわれるあいつ」
タイトルの直後、熊五郎(東京ぼん太)がやせ馬の馬吉(青木富夫)に都築浩介(小林旭)の居場所を訪ねるシーンはハチ公前広場。左手にハチ公像が映っている。
1967(昭和42)年/日活
出演:小林旭、東京ぼん太、内田良平、岡崎二朗、青木義朗、藤竜也、万里昌代、嘉手納清美
ギター1本で街から街へ渡り歩く歌手都築浩介(小林旭)は、弟分熊五郎(東京ぼん太)の恩師が長岡で殺されたとの話を聞き、熊五郎に同行し長岡へ向かう。警察署で恩師の娘麻子(嘉手納清美)から話を聞くと、恩師は現金強奪をたまたま目撃したため殺されたという。ギャングたちが残した銃弾は線状痕を残さない特殊なもののと聞き、浩介は以前自分を同様の銃弾で狙ったある男に思い当たる。
長岡の名物を盛り込み、アクションもたっぷりあるのだが全く盛り上がらない作品。藤竜也のむだ遣い。
映画「クレージー大作戦」
脱走した石川五郎(植木等)ら一味を追って警察官達が渋谷駅周辺を警備するシーン。ハチ公前広場。左端は「渋谷駅前交番」。背後に「東急百貨店東横店東館」。
1966(昭和41)年/東宝
出演:植木等、ハナ肇、谷啓、犬塚弘、桜井センリ、石橋エータロー、安田伸、野川由美子
砂走刑務所の第七号監房の看守加古井守(ハナ肇 )はバンド活動を通じ入所者の更生を図っていた。そこへ石川五郎(植木等)が入所してくる。石川は入所者の一人大平久(谷啓)の金庫破りの腕を買い、脱獄して暗黒街の「頭取」(進藤英太郎)から10億円を奪おうと計画していたのだ。これを聞きつけた監房の仲間の陣十郎(犬塚弘)、ジョージ・馬場(桜井センリ)、花見小路抜麿(石橋エータロー)、薮越与太郎(安田伸)がこれに加わり、養老院の慰問演奏中に加古井を道連れに脱走をする。
映画「警視庁物語 顔のない女」
冒頭渋谷の街からハチ公前広場までが映し出される。渋谷駅前交差点とハチ公前広場。ハチ公は広場内の地下商店街入口の四角い屋根の上にみえる。
1959(昭和34)年/東映東京
出演:松本克平、神田隆、堀雄二、南廣、花澤徳衛、山本麟一、須藤健、佐原広二、片山滉、岩上瑛 、佐久間良子、沢村貞子、加藤嘉 、菅井きん
荒川土手でバラバラ死体の胴体部分が発見される。別々の場所からその他の部分も見つかるがなかなか身元が割れない。死体の顔から摘出された義歯と美容整形で隆鼻手術に使う象牙を手がかりに捜査を進める刑事達。歯科医の証言で被害者はキャバレーの女給小沢初江と判明。荒川に何かを投げ込もうとしていたところを目撃された車の持ち主の男、初江と関係のあった男などを追うがいずれも真犯人ではなかった。「事件当夜仙ちゃんと云う男に車を貸した」という車の持ち主の妻の証言から米倉仙三という男が捜査線上に浮かび上がる。
7人の刑事達が足を使ってコツコツ捜査する「警視庁物語」シリーズの第9話。「マニキュアやペディキュアをしている女性は売春婦」という偏見、水上生活者、ダルマ船の酒場、ハンカチタクシーといった当時の風俗が描かれている。車の持ち主の妻に杉村春子、歯科医に加藤嘉、被害者が住んでいたアパートの大家に菅井きん、被害者が愛用していた訪問販売の化粧品会社の販売部長に高橋とよ…と脇役がやけに豪華な一作。
映画「私が棄てた女」
吉岡務(河原崎長一郎)の回想シーンには緑のフィルターがかかる。吉岡が森田ミツ(小林トシ江)と待ち合わせをした時の渋谷駅前のシーン。右にハチ公像。
1969(昭和44)年/日活
出演:河原崎長一郎、浅丘ルリ子、小林トシエ、小沢昭一、加藤武、岸輝子、辰巳柳太郎、加藤治子、夏海千佳子、佐野浅夫、露口茂、早野寿郎、大滝秀治、江守徹
社長の姪マリ子(浅丘ルリ子)との結婚を控え将来を約束されていた吉岡務(河原崎長一郎)は、ある日抱いたクラブの女から森田ミツ(小林トシ江)の名前を聞いて驚いた。ミツは吉岡が学生時代遊びのつもりで関係を持ち棄てた女工であった。ある日マリ子の親族への挨拶のため車で移動していた吉岡は、街でミツを見かけ追いかける。ミツが7年経った今でも吉岡のことを愛していたことを知り、吉岡の心は揺れ始める。
無教養だが自らを犠牲にして人を愛するミツと、地位と献身的な愛の間で悩む吉岡の姿を描く。
ドラマでは情けない役どころが多い印象の河原崎だが本作では美しい浅丘ルリ子に愛される役。小林トシ江が地方出身の素朴な女工の献身的な愛をみごとに演じている。パートカラーで製作されており、吉岡の回想シーンは緑のフィルター、ミツの回想シーンは赤のフィルターがかかり、ミツが「新相馬節」を歌うシーンで映る相馬野馬追の様子とラストのシークエンスのみカラー映像になる。原作は遠藤周作の「わたしが・棄てた・女」。
映画「その人は昔」
青年(舟木一夫)と洋子(内藤洋子)が上京し降り立つのが渋谷。ハチ公前広場。右手にハチ公像がある。
青年(舟木一夫)と洋子(内藤洋子)が上京したシーンの渋谷駅前の空撮。左上を横切るのが山手線、画面を横断しているのが銀座線の車庫に向かう路線と井の頭線。赤い屋根が井の頭線渋谷駅。左上の山手線をまたぐ白い建物が「東急百貨店東横店東館・西館」。足元にハチ公前広場が広がる。銀座線の向こうの赤い看板の建物は「渋谷駅前会館」(現存、道玄坂1-3-1)、その向こうが「渋谷東急ビル」(のちに「渋谷東急プラザ」、現「渋谷フクラス」道玄坂1-2-2、)。中央の黄色い「サントリー」の看板は「渋谷駅前ビル」(現存、道玄坂2-3)、ナショナルの看板は「峯岸ビル」(現「QFRONT」宇田川町21-6)。建設中なのは「西武渋谷店A館」。
1967(昭和42)年/東宝
出演:舟木一夫、内藤洋子、山中康司、大木徹三
北海道の漁村で暮らす青年(舟木一夫)と洋子(内藤洋子)は、貧しい暮らしに嫌気がさし2人で上京する。最初は力を合わせながら暮らしていた2人だったが、青年は賭け事にうつつをぬかし、洋子は裕福な男性(山中康司)と付き合うようになる。結局既婚者であった男性に捨てられた洋子は青年のもとに戻ろうとするが…。
内藤洋子のヒット曲「白馬のルンバ」が聴ける。脳を揺らすような摩訶不思議なデュエット曲「恋のホロッポ」はクセになる。原作が「レコードドラマ」(音楽と音声のドラマでストーリーを構成したものか?)であったせいか、全体的にストーリーが希薄でイメージビデオのような印象。音楽担当の船村徹の演歌調のテイストが全編を支配し、ロック調やジャズ調の曲も垢抜けなさがぬぐえない。
映画「ゆがんだ月」
神戸にいられなくなり東京に出た桂木正夫(長門裕之)は職を探し街々を歩き回る。渋谷駅から出てハチ公前広場を歩く桂木。背後には「東急百貨店東横店」。
1959(昭和34)年/日活
出演:長門裕之、芦川いづみ、三島雅夫
神戸のやくざ立花組の桂木正夫(長門裕之)と米山辰吉(高原駿雄)は店から出たところを襲われ、米山は射殺される。桂木と暮らす恋人江田奈津子(南田洋子)は立花組の幹部立石純平(梅野泰靖)が米山を殺すのを見ていた。やがて立花組のチンピラ五郎(近江大介)が自首し、この件を怪しんだ新聞記者木元(大坂志郎)に問いただされても桂木は口をつぐんでいた。だが米山の葬儀の日妹の米山文枝(芦川いづみ)に桂木は真実を話してしまう。桂木は木元にも真相を告げ、江田に別れの電話をし身の安全を確保するため東京へ移り住んだ。
撮影(姫田真佐久)が見事。主人公の長門裕之は同棲相手を演じた南田洋子と後に結婚。
富岡畦草「東京 消えた街角」(1992/玄同社)
川本三郎「銀幕の東京」(1999/中公新書)
野村宏平「ゴジラと東京 怪獣映画でたどる昭和の都市風景」(2014/一迅社)
宮崎祐治「東京映画地図」(2016/キネマ旬報社)