「おかあさんといっしょ」新兄姉の系譜をたどる

4月に出演者が交代し、初めての公開イベントである「おかあさんといっしょファミリーコンサート」がゴールデンウィークに開催された。3月まで歌のおにいさんを務めていた速水けんたろう、おねえさんを務めていた茂森あゆみ、「トライ!トライ!トライ!」のコーナーを担当していた松野ちかをゲストに迎え、新旧出演者が共演するステージであった。
このコンサートを見ていたら、先々代から先代に交代した頃、彼らがステージで共演していたシーンを思い出した。
愛敬の塊といった趣の童顔の先々代の歌のお兄さん(坂田おさむ)と、大人っぽい容貌でなんとなく暗い印象を受けた速水。音程が抜群に安定しており、長身でスタイルの良かった先々代の歌のお姉さん(神崎ゆう子)の余裕たっぷりの笑顔と、背が小さく声がうわずり気味の不安定な歌声の茂森の堅い笑顔。
今、私が、現役チームに感じている違和感を、先々代のファンも感じていたことだろう。
ふと思ったのだが、(歌唱力やリズム感のことはさておいて)ルックスの印象からいうと、つのだは神崎の後継者かもしれぬ。スラリと伸びた長い手足、堂々とした態度、スッキリした笑顔。
一方、番組登場当初の茂森の恥じらうような笑顔は、15代目の歌のお姉さんの森みゆき的な雰囲気をもっていたように思うのである。ほんわかとして柔かく、だが、芯の強そうな笑顔。余談だが、森と茂森は九州出身であり、神崎とつのだは関東出身である。
速水は、アニメ主題歌を唄っていた経験もあることから、2代目歌のお兄さんの水木一郎、あるいは3代目のたいらいさおの後継者か? 水木やたいらほどは熱くないんだが、豊かな声量や落ち着いたルックスはこの2人の系統だろう。
一方、杉田は、初代歌のお兄さんの田中星児のイメージがダブる。田中は、当時、NHKの若者向けの音楽番組で、唄って踊るダンスチームの一員として活躍していたわけだが、その割には、ダンスのセンスは今ひとつ。世間ずれしていないというか、世間から大きくズレているような雰囲気が持ち味である。平たくいえば「ださい」とでも言おうか。杉田は、「ラ・ミゼラブル」などのミュージカルに出演していた経験をもつ舞台俳優だが、杉田のダンスは、我々がミュージカル俳優に抱く期待をあえなく打ち砕く踊りっぷり。無論、ミュージカルと幼児向け番組の歌についている振付では勝手が違って当たり前だが、もっと根本的なダンスのセンスのようなモノが少々欠けているように見えるシーンも少なくないのである。私は杉田の舞台を見たことがないので、彼が舞台上で踊っていたのか踊ってなかったのかさえわからないわけだが。
田中も神崎も、「おかあさんといっしょ」の歴代兄姉の中では、長い出演歴を誇っている。先代の速水と茂森のコンビは6年、先々代の坂田が8年、神崎が6年(二人のコンビは6年)。今は見ているだけではらはらどきどきしてしまう杉田とつのだのコンビだが、意外と長く続くやもしれぬ。そして次の交代の時には、「先代チームはよかったねえ」と視聴者にため息をつかせるのかもしれない。【み】

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