「おかあさんといっしょとゆかいななかま」見聞記

まず、結論から言おう。
茂森の太股、佐藤の生腹。
今回のテーマはこれに尽きる。

また、今回の主役は、茂森でも速水でもなく、ETVでもなく、ましてやETV40のシンボルキャラクタの妙なカタチのウサギ2匹でもない。
主役は、古今亭志ん輔である。

以上の結論、納得いかない向きもあろうが、実際にステージをご覧になった方なら、きっとおわかりいただけることと思う。
どーなっつ4匹衆が「出発進行!」と唄う、コンサートのプレオープニングテーマが聞こえてきた。そろそろ開幕である。

1999年3月20日、幕張メッセ。
「教育テレビ40周年NHKチャリティーコンサート『おかあさんといっしょとゆかいななかまわくわく大行進』」。長いぞ、タイトル。

発売日に指が痛くなるほど電話をかけ、ようやくゲットした2階席のチケットであったが、当ページ常連のT氏のご厚意により、A席と交換していただいたのであった。
3列目。手を伸ばせばステージに手が届きそうな、と言いたいところだが、さすがにどんなに頑張って手を伸ばしても、2列前の席に座る見知らぬ爺さんのうしろ頭を撫でるのが精一杯。

とはいうものの、やはり驚くほどステージが近い。
どれくらい近いかというと、茂森あゆみ(歌のおねえさん)と、松野ちか(体操のおねえさん)が履いていたサンダルのヒールの高さが確認できないほど近いのである。つまり、あまりにステージに近いため、足元まで見えないのだ。

今回は、いつものメンバー(東京福袋のみやしたと吉野+我々が日頃より懇意にしている4歳児)ではなく、先述のT氏と、やはり当ページ常連のA氏のお二人とご一緒させていただいた。ちなみに、お二方とも、正統派のShigemorist(茂森フリークを指す当ページの造語)。

前から3列目などという夢のような席に座るやいなや、目についたのがステージ上に設置されている緞帳代わりのベニヤ板かなにかで作られたパネルである。「どーなっつ!」「にこぷん」のイラストが描かれているのだが、なんだか急場しのぎのようなチープさ。とてもプロの仕事とは思えぬ。せっかくのETV40周年記念コンサートなのに、なぜ……?
考え方を変えれば、ここ幕張とその前に実施された北九州市の2回しか使わないわけで、ファミリーコンサートのように全国を持って回るわけではないので、この程度でいいのかもしれないが。

まあ、これも、前から3列目という素晴らしい席に座っていたからこその不満であろう。2階席だったら、パネルの安っぽさなど、きっと気づかなかったはずだ。
さて、ベニヤ幕が上手(かみて)と下手(しもて)に分かれ、舞台袖に消えていく。すると、ステージ中央に、華やかなライトを浴びて、速水けんたろう(歌のおにいさん)、茂森、佐藤弘道(体操のおにいさん)、松野の4人が並んで、手を振っている。

芥子色のソフトスーツの速水、青みがかったグレイのベストの佐藤、真っ赤なノースリーブのミニドレスの茂森、水色のノースリーブのミニドレスの松野。
タッパのある速水は、フォーマルなスタイルがよく似合う。一方、佐藤のベストは、彼の鍛えられた逆三角形の肉体を際だたせると同時に、甘い童顔にマッチして、非常にキュート。
「主役は私よ」とばかりに真っ赤なドレス姿の茂森。胸元にグルリと縫いつけられたラインストーンがきらめき、よく目立つ。足元はやはり赤いサンダル。
最近のファミリーコンサートでは、ラフなスタイルばかりの松野のミニドレス姿、3月いっぱいで降板する彼女へのはなむけか。いや、彼女との別れに胸を痛めているChikamania(松野フリークを指す当ページの造語)への最後のプレゼントか。ほっそりとした首には共布のスカーフ。足元は水色のサンダルである。

柔らかく軽い生地でこしらえてある茂森と松野のドレス(手作り風の簡単なドレスだ)は、彼女たちが動くたびに裾がひらひらとめくれあがる。なにかにつけ盛大にジャンプする茂森、登場するなり、美しい脚が丸見えである。松野もやたらと元気よく動くものの、茂森ほどは太股が露にならない。なぜだ?
よく見ると、茂森のドレスの方が、スカート部分に多くの生地を使っているようだ。その分、スカートのフレアが広がりやすいのだ。
よく似たデザインだが、松野のドレスの方がストンとした形。ま、それでも、松野の綺麗な脚をかなり堪能できたのだが。

隣で観覧しているT氏もA氏も、美しい4本の脚にすっかり魅了されている様子。
そりゃ当たり前だ。あんなシロモノを目前で見て、クラクラしない男はいないだろう。我々は上手側に座っていたのだが、目の前で速水や佐藤がにこやかに微笑みながら手を振っているにもかかわらず、我々の視線は下手の茂森と松野の下半身に釘付けである。すまぬ、速水。申し訳ない、佐藤。こんな我々をどうか責めないでほしい。これもみな、茂森と松野の美脚がいけないのだ。美は罪。

チラチラと見え隠れする麗しい4本の太股に目を奪われている間に、ステージでは、今回のテーマ「おたんじょうびパーティ」のストーリーが展開していく。
速水、茂森、佐藤、松野の4人、どーなっつ4匹衆、「英語であそぼ」「いないいないばぁっ!」のメンバーの元に届いた差出人不明のバースデイパーティの招待状。一体誰の誕生日なのか……?
って、言ってもねえ。「教育テレビ40周年記念コンサート」って銘打ってるんだし。端からオチはバレバレである。

「おかあさん」マニアの私、「英語」や「ばぁ」のキャストには、全く興味がないわけだが、注目すべきポイントがないわけではなかった。
「英語」のクリス(クリステル・チアリ)である。
いや、クリスが好きとか嫌いとか、そういったレベルの話ではない。
クリスがステージに登場するなり、なにはさておきチェックしたのは、彼女の腋の下部分。妙齢の娘さんに対してこんなことを書くのは誠に心苦しいのだが、「英語」のオープニングテーマの映像で、クリスが手を上げるたび、腋の下にクッキリと汗じみが浮かび上がっているのである。1月に島田勝氏(「ストレッチマンファンページ」主催)にお会いした時にこの事を教えられ、それ以来、「英語」を見るたび、「腋の下」「汗じみ」で頭がいっぱいになってしまっている我々であった。
毎日流れるオープニングテーマの映像である。なぜ誰もチェックしてやれなかったのか。これは、明らかに「英語」スタッフの怠慢であろう。

さて、そんなわけで、我々はクリスの腋の下に目をこらしたのだが、幸いなことに汗じみの気配はない。良かった。
ところで、この日のクリス、ものすごい嗄れ声である。ハスキーボイスなどといった甘いモノではない。台詞がとぎれとぎれになるほどの嗄れ声なのである。いくら「魔女」というキャラクタとはいえ、あんまりな声である。風邪をひいたか、リハーサルで潰したか。

「英語」メンバーの次に登場したのが、「ばぁ」のワンワンとかなちゃん(田原加奈子)。でかいぞ、ワンワン。地味だぞ、かなちゃん。
だが、低年齢の子連れの客の食いつきは最高である。
「ばぁ」のテーマが流れると、場内、いっぺんに盛り上がる。「英語」と「ばぁ」の共演で、「ばぁ」でおなじみの「まねっこどんどん」を観客と一緒に唄った後、今回のステージの目玉シーンの1つに、なだれこむ。

わけのわからぬコスチュームを着用し、顔を真っ白に塗り、あまつさえ口紅までひいた古今亭志ん輔がステージ中央に。観客呆然。
さらに「しんちゃん、れ〜す」。
ゆるみきった表情にゆるみきった動き、そしてゆるみきった口調。これは一体何事か?

続いて、同様に出鱈目なコスチュームを着た速水、茂森、佐藤、松野が登場。
呆然自失から立ち直り、冷静に見てみれば、これは「ばぁ」の「ちびっこまん体操」に出演している子役たちのコスプレではないか。
フリフリドレスの茂森と松野、昆虫コスチュームの速水、佐藤。

「けんちゃんで〜す」「あゆみちゃんで〜す」と、名乗りながら、人指し指を頬に当てる「かわいいポーズ」をキメる4人に対し、いちいち「けんたろうさん、恥ずかしがってるね」「あゆみちゃん、相当恥ずかしがってるねエ」「弘道くんもまだ恥ずかしがってるね」とツッコミを入れる志ん輔師匠。
そして、「ちィかちゃァん、れえ〜す」と天真爛漫にポーズをキメた松野に向かって、「ちかちゃんはいつもと同じだねェ」でオチ。

そして、「僕たちも一度やってみたかった」ということで、乳児コスプレの4人が「ばぁ」チームと一緒に「ちびっこまん体操」を披露。
客席の子供たちに「一緒に体操しよう」と呼びかけて始まったものの……、空前絶後、阿鼻叫喚の地獄、いや、極楽のごときシーンが繰りひろげられたのであった。

番組を見たことがあればおわかりだろうが、「ばぁ」の体操コーナーに出演しているのは、よちよち歩きのチビすけどもばかりである。まだ人間になりきっていない我が道を行くマイペースなヤツらばかりなのである。
ETVの越後獅子・かなちゃんと巨大なイヌのぬいぐるみ・ワンワンが、健気に体操している間、彼らは思い思いの行動をとる。
気が向けば体操に参加することもあるようだが、ぼんやりと虚空を見つめる者、カラフルなセットに目を奪われる者、自らの指を賞味している者、流れている曲とは無関係に手拍子する者……と、まあ、このような愉快なシーンが毎日展開しているわけだが、なんと、乳児コスプレの5人衆は、このシーンを完全コピーしてしまったのだ!

番組やイベントで見せるいつものニコニコ笑顔ではなく虚ろな表情。リズムからずれ、拙い動き。
さすがに佐藤は「体操のおにいさん」という役割から逃れられなかったのか、かなり忠実に体操をしていたが、その他の面々は、セットをいじる、突然笑い出す、手をぶらぶらさせる、しゃがみこむ等々、まさに「ちびっこまん体操」の世界である。

しかも!途中、茂森は、床に寝転がり、足を空中高く振り上げ、ばたばたさせたのである!スカートの中は全開だ!
なにせ我々は前から3列目で観覧しているのである。茂森の前に立ちはだかるワンワンが邪魔だったとはいえ、当然丸見えである。
共布で作ったオムツカバーのような大きなピンクのパンツを着用していたのだが、見せパンであろうが、パンツはパンツ。茂森あゆみのパンツ丸見え。いくら現役最後のイベントとはいえ、こんなにサービスしてどうする。いいのか。これぞ眼福。会場に1000人はいるであろうパパたちの胸中や如何に!

一方、松野。こちらは、露出ではなく演技でサービスである。
突然ステージ前方に走ってきてえへらえへらと笑ってみたり、妙な表情を作ったり。ええ塩梅の壊れ具合である。「おかあさん」に登場したばかりの頃のかたい笑顔を思い出すと、なんとも感慨深い。

ところが、茂森&松野の大健闘をよそに、一人、場をさらってしまった者がいる。そう、志ん輔師匠である。
志ん輔師匠、体操が始まるやいなや、口を半開きにし、ぼーっとした表情でステージ中央に立ちつくしたのであった。
これは目立つよ。他のメンバーが細かい芝居を必死に繰りひろげているというのに、観客の視線独り占めである。エンターテインメントの世界で生きる本職としての意地か。さすがである。

「ちびっこまん体操」で、我々の興奮は絶頂に達したわけだが、ステージ上では、今回の本来のテーマである「ETV40周年」というストーリーが淡々と続いている。いや、もう、どうでもいいよ。茂森のパンツ丸見え、これ以上、何を望む。

……と、これではレポートが終了してしまうので、話を続けよう。

ETV40周年(「ETV40」)のイメージキャラクタのウサギ状の生物、タップとクラップ。テレビではCGキャラなのだが、これをぬいぐるみにするのは、無理があったのではないか。むっちりとした太股、胸に点滅するハート、安っぽい耳と尻尾。強引に立体化された不気味な2匹の姿は、大きなぬいぐるみが苦手な私にとって、恐怖以外の何者でもなかった。

さて、ETVのバースデイパーティということで、それぞれがお祝いに歌を唄うという趣向。
速水と茂森は、こんな時にピッタリの「おかあさんといっしょのトルコ行進曲」。3/20の回、速水の喉の調子があまり良くなかったのか、出来は今いち。茂森の早口もいつもの冴えが見られなかった。無念。

そして、会場お待ちかねの「だんご3兄弟」。
連日、マスコミが繰りひろげる「だんご」騒動に食傷気味の我々ではあったが、なんといっても「ナマだんご」である。期待は高まる。

速水&茂森に松野を加えて「3兄弟」。
真面目くさった顔で踊る松野がやたらとチャーミングである。

3月で降板する3人。華やかな衣装に身を包み、歌い踊る3人の姿を見ているうちに、別れの哀しみが胸にあふれてくる。
もし、昨年中に「月のうた」(「だんご3兄弟」は「おかあさんといっしょ」の99年1月の歌)に選ばれていたら、この速水&茂森+松野トリオのバージョンのミュージッククリップも作られていたのではないかと思うと、残念でならない。

悲しみにじっくりひたる間もなく、続いて登場するのは、またしてもなんだかわからぬメイクの志ん輔師匠。
今度はメキシカンなコスチュームである。
秋のファミリーコンサートでの和太鼓と同様に、和の芸の蓄積を感じさせる「ぞく尽くし」。見栄を切る姿もピタリとキマり、さすがは噺家である。
どーなっつ!のふぁど、れっしー、空男の3匹(「トリオ・ザ・ドーナッツ」と紹介)を引き連れ、「さんぞくブルース」を熱唱。

……と、ここにたどりつくまでが長いんだ、これが。

「だんごの後は唄いたくなかった。みんな(客が)抜け殻になっちゃってるでしょ」というのが、3/20のネタだったが、千秋楽(3/22午後)には、白塗りのメイクに速水が「鈴木その子?」とツッコミを入れてみたり、「けんたろうさんも『月のうた』を作ってるんでしょ?なんていう歌?」「『あつまれ!笑顔』です」「え?」「『あつまれ!笑顔』」「え、なんだって?」「『あつまれ!笑顔』」「やだね、この人、3回も言ってるよ」。
さらに「何月の月のうただったの?2月?そりゃ駄目だ。1月だったら300万枚だったんだけどね、2月じゃせいぜい3万かな」という“月うたネタ”、「今日はね、弘道くんのお母さんが来てるんですよ。もう、こんなになって(老婆がよたよたと歩くような仕草)来てるんですよ。ちかちゃんのお母さんも来てるんですよ。もうこんなになって(再び老婆がよたよたと歩くような仕草)来てるんですから。(2階席を指さし)あの辺にいると思うんですけどね」という“佐藤&松野の母ネタ”、「けんたろうさん、週刊誌にすっぱぬかれちゃって〜」などという“「女性自身」誌ネタ”など、歌に入るまでのトークが、いや長いこと。

「さんぞくブルース」を唄い終わり、どーなっつ!の3匹と共に下手袖に引っ込みかける志ん輔師匠、千秋楽には「♪ドンタコスったらドンタコス」とメキシカンスタイルにちなんだCMネタまで披露(湖池屋のスナック「ドンタコス」CM。ちなみにこのCMの制作は「だんご3兄弟」作詞の佐藤雅彦氏)。
慌てて戻ってきて、「すみません、ここがNHKだったのを忘れておりました。聞かなかったことにしてください」などとダメ押しの一言。ここでも志ん輔師匠、大活躍であった。

さて、ここで、体操「あ・い・うー」。
志ん輔師匠がリードし、観客が「弘道おにいさ〜ん!」と声を揃えて呼びかけると、上手袖から「は〜い!いくよ!」と声がして、佐藤がお約束のバク転しながら、ステージに登場。客席のママさんたち熱狂の瞬間だ。
佐藤は先程までのフォーマルなコスチュームから一変して、薄手のトレーナー&白いコットンパンツ姿。バク転をするたびトレーナーがめくれあがって、引き締まった腹が見え隠れする。
“茂森&松野の太股”と“茂森のパンツ”が、パパへのサービスなら、“佐藤のナマ腹”はママにターゲットを絞ったサービスといえよう。

この後、1月から12月まで順に誕生月の者をひたすら呼ぶという歌詞の「だれにだっておたんじょうび」を出演者全員で合唱。「12月」の部分では、ちゃんと12月生まれの茂森を真ん中にフューチャーしていたのは良かったが、私の誕生月である「11月」の部分は「英語」チームが唄っていたので、かなり悲しかった。「おかあさん」チームに唄ってほしかったよう。

後半は、ETV40周年であると同時に「おかあさんといっしょ」も40周年ということで、「『おかあさんといっしょ』40曲メドレー」である。

速水が「ETVだけじゃなくて、他にも40周年のものがあるんだけど」と切り出すと、佐藤がそれを受け、「40?40……、あ、40!」と、速水に握手を求め、「まだ40になってないよ、もうすぐだけど。あ、いや、何を言わせるんだよ」という小ネタが入る。
メドレーに入る前に、「40曲全部知っている人はエライ!」と4人が声を揃える。40曲聞き終わり、すべて知っていた私は心の中で思わずバンザイである。こんなことを知っていたからといって特にエライとも思えないのだが、ま、4人がそう言ってくれるんだから、ありがたくその言葉、頂戴しておく。

そして、エンディング。楽しい時間はあっというまに過ぎてしまう。

速水はグレイのマオスーツ。芥子色のスーツも良かったが、この衣装も誠にナイスである。
茂森はえんじ色のストラップロングドレス、首には同系色のフェイクファー。茂森のスレンダーな体型によく似合っており、エンディングにふさわしいゴージャスさだ。

「バイ!バイ!バイ!」を出演者一同で唄い、その後、「おかあさん」チーム5人で「夕焼け影絵」で締める。
3月で降板の速水、茂森、松野、志ん輔。4月からも続投の佐藤。いったん5人が中央に集まり、その後、すっと別々の方向に分かれる振付は、いかにも別れにふさわしい。
これで、「おかあさん」現役メンバーとしての4人とはもう会えない。彼らはそれぞれの道を歩んでいく。

千秋楽ではこの場面で5人ががっちりと抱き合い、速水や佐藤の顔が悲しげに苦しげに歪んでいたのが印象的であった。
このコンサートの模様は、すでにETVで放映されているため(3/22)、かなり端折って記述したことをご容赦いただきたい。【み】

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